木曜日, 7月 07, 2011

APSフィルムの生産中止

 フジフィルムがAPSフィルムの生産販売を終了するそうです。1996年から生産していたのですから、わずか15年で終了するということになったわけです。

 APSサイズのフィルムというのは、なぜこの時期に発売されたのでしょう。フィルム方式の写真の延命策だったと思います。デジタルカメラとして最初に発表されたのがソニーのマビカでした。これは当時では画期的でしたが、結果的には一般には受け入れられませんでした。フロッピーディスクを使用していたこともあったのですが、早すぎたということもあったと思います。しかし、デジタル化への大きな一石を投じたことは間違いありません。

 衝撃的であったのは、1995年に発売されたカシオのQV-10というデジカメです。これが現在のデジカメの原型ともいえます。なにが衝撃的であったかというと、液晶画面を搭載したことです。今では当たり前になっていますが、これがデジカメの使い方を切り開いたという意味で画期的だったのです。撮った直後に確認できるというのが非常に大きなメリットだったのです。QV-10は、良く売れたのですが、10万画素にも満たない画像ですから、粗い画像であったのは言うまでもありません。一番喜んだのはビジネスの現場だったと思います。いままで、レポートなどに写真を入れるとしたら、簡単にできるのはポラロイド位でした。しかし、ポラロイドは電子化ではありませんので、それを一旦スキャナーに読取って文書に入れるという方法しかなかったと思います。それが、QV-10の出現で、即座に文書に写真を貼り付けることができるようになったのです。文書に貼り付ける写真であれば、10万画素以下でも十分でした。これで文書に写真を組み込むことが圧倒的に楽になったのです。

 では、なぜこの状況で翌年にAPSが発売されたのでしょう。それはフィルムメーカの危機感と、カメラメーカのデジタル化への時間かせぎだったと推測します。QV-10はデジカメでしたが、画質はフィルムとは比べようのないものでした。カメラメーカとしては画質を優先せざるを得なかったのだと思います。その間に少しでもフィルムを延命し、そのフィルムに対応できるカメラを提供することでデジタルへの繋ぎにしようという試みだったのではないでしょうか。

 結果的には、APSカメラは殆ど浸透しませんでした。結果論ですが、動機が不純であったということでしょう。そこをユーザに見透かされたともいえます。APSという名前がAPS-Cというデジタル一眼用センサーの標準サイズとして生き残ったというのは皮肉なものです。

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