月曜日, 10月 11, 2010

ゴッホ展

 ゴッホ展に行って参りました。私の最も好きな画家です。27歳で画家になることを決意。37歳で自らその命を絶ってしまう。生涯売れた絵はたったの一枚。これだけでもドラマチックな生涯であることが十分に伝わってきます。その間ひたすら自分の求める絵を描き続けていたというのですから、余計にその作品に思い入れが入ってしまいます。

 なんと言っても、その色使いの素晴らしさには何度みても感心してしまいます。普通では考えられないような色を使いこなしているのです。普通、同系の色を使うというのが絵を落ち着かせるには効果的なのですが、ゴッホの作品には補色(例えば青と黄色)を使ったものが結構あります。補色どころか、原色を全て配置したような絵もあるのです。それでいて、散漫にならないのですから実に不思議です。また、現実にはあり得ないような色を入れてそれでいてさもその色があったかの如く見せてしまったりするのですから本当に不思議です。

 ゴッホの例を見ても、人の評価というのは如何にあてにならないかということが良くわかります。ゴッホのような芸術家、あるいは芸術家ではなくても評価されない作家や詩人あるいは写真家はまだたくさんこの世の中に埋もれているのでしょう。もちろん、芸術とは関係のない市井の中にもそういう人はいっぱいいるのでしょう。もともと、人が人を評価するということ自体がおかしなことです。

土曜日, 10月 02, 2010

ドガ

 ドガ展(横浜美術館)に行ってまいりました。印象派と言われていますが、初期の作品には古典的な描き方も残っています。この時期の印象派の一つの大きな特徴ともいえます。それよりも、私が驚いたのは、明らかに写真の画角と思われる作品があったことです。『メニル=ユベールの屋敷のビリヤード室』と題する絵です。その絵の説明には書かれていませんでしたが、明らかに広角レンズでとらえた写真を見て描いたとしか思えない作品でした。丁度、ドガが活躍した頃は、写真が世の中に現れた時代です。ドガは、実際に写真を多くのこしており、また、写真を見て絵を描いています。

 もうひとつ驚いたのは、その写真の構図です。写真を撮る常識からは、全く外れた構図を採用している点です。普通、人物を撮る時に、人物が左を向いていたら、左の空間を大きく取ります。右の空間は狭く設定します。こうすることで、見ている人に、人物が見ている何かを想像させることができるのです。それが何であるかということは問題ではありませんが、そこに何かがあるということが分かるので、ある意味で安心して見ることができるのだと思います。ところが、ドガの撮った写真は、これと全く反対の構図なのです。そして、人物の後ろ側は必ずと言っていいほど暗い空間が設定されているのです。だから、人物の左の明るい空間とのコントラストが見事なのです。これには、本当に驚いてしまいます。絵の中にも、同じような構図のものがありましたので、きっとドガのお気に入りの構図だったと思います。

 そして、私が一番すばらしいと思ったのは、あの有名なバレーを描いた『エトワール』です。実物は、全く違った印象でした。いままで良く印刷物で見かける絵でしたが、実物の印象は衝撃的でした。しばし、その前から動けませんでした。言葉では語りつくせないものです。ドガを語るのであれば、この作品ひとつで十分ではないかとさえ思えてしまいます。この絵は、初めて日本に来たそうです。ぜひ、見に行ってください。