日曜日, 3月 22, 2015

子規庵

 台東区、鴬谷駅の近くに子規がその人生の最後の時を過ごした庵がある。NHKの坂の上の雲でも出てきたシーンがまさにそのまま甦ったような質素な家であった。戦災で焼けてしまったが、その後かなり忠実に再現したものとのことである。庭もさほど広いものでもなく、8畳、6畳、4畳半、3畳と台所という平屋の作り。部屋は明るい日差しに照らされていて、健康の為にはよさそうであった。最後を迎えた部屋には、指物師に特別にあつらえさせた机が置かれてあり、その机は、手前側に15センチ四方程度の切り欠きが作ってあった。足が悪くて立膝で書き物をするためであった。
 この小さな庵から病気と闘いながら、数々の作品を生み出していったという。子規にとってはこの庵が全宇宙であり、この小さな空間からあらゆるものを感じ取って、句や随筆にしていたのだろう。
 わたしの心を打ったのは、一角の展示室に、子規の食事の内容が展示されていた部分。とてつもなく、多くのものを口にいれ、滋養に富んだものを摂っていたのだ。体のためを思って、栄養を取れば直す事が出来ると思っていたのだろうが、なんともいじらしいというか、胸が締め付けられる思いをしてしまった。
 帰り道に、近くにあった三平堂という林屋三平の邸宅があった。その対照があまりにもとてつもなく、却って子規が哀れに思えて仕方が無かった。

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